3:シャコガイの生活環



 生活環とは、生物が生まれてから成長し、生殖を経て次の世代に移行するまでの周期を言います。 大抵は環状の図で示すことが多いので、ここでもそのように説明します。



 受精卵の上方にある小さい丸は第一極体で、染色体数を半減させるために現れるものです。 軟体動物は受精後に第一極体、第二極体を放出します。
螺旋卵割(らせんらんかつ)によって各細胞の大きさを成体と同じレベルまで小さくすると、 その後体細胞分裂を経てトロコフォア幼生となります。
トロコフォア幼生には多数の繊毛があり、多少の運動能力があります。
また、この時期から殻の形成が始まり、図では右下にあります。

 トロコフォア幼生がさらに成長すると、ベリジャー幼生となり、初期はその形からD型幼生と呼ばれます。 ベリジャー幼生では殻が体全体を覆い始め、徐々に貝らしくなりますが、まだ繊毛が露出します。
ちなみに、受精卵からD型幼生までは約30時間で変化するようです。
ベリジャー幼生の期間は10〜15日で、その期間は微小なプランクトンやデトリタスを食べて生活します。
この時に、Symbiodinium属の渦鞭毛藻の一種( Symbiodinium sp.)を食べるんですが、 その一部が消化管から抜け出し、外套膜へ移動します。
外套膜へ移動したSymbiodiniumは増殖を始め、シャコガイとの共生が成立します。
(共生に関しては後で別に取り上げます。)
共生が成立すると、シャコガイの幼生の色が渦鞭毛藻色の茶褐色になり始めます。

 ここまでのプランクトン生活を終えると稚貝に変化し、適当な岩などに足糸を付けて定着生活を開始します。
稚貝は光条件に応じてクロロフィルaの量を変化させ適応し、色が変化します。(暗いと色が濃くなる)
また、プランクトン・デトリタスを食べることに加え、共生させたSymbiodiniumを利用した栄養摂取も始めます。

 稚貝が成貝まで成長し、成熟すると定期的に集団で放精放卵をするようになり、再び受精卵ができて次の世代が生まれます。




 −目次−
1:シャコガイの形態
  1-1:殻について
  1-2:体について
2:シャコガイのなかまたち
  2-1:ヒメシャコガイ
  2-2:シラナミガイ
  2-3:トガリシラナミ
  2-4:ヒレシャコガイ
  2-5:ヒレナシシャコガイ
  2-6:オオシャコガイ
  2-7:シャゴウガイ
  2-8:ミガキシャゴウガイ
3:シャコガイの生活環 (現在のページ)
4:シャコガイの特徴
  4-1:渦鞭毛藻との共生
  4-2:外套膜の色
5:シャコガイの養殖
6:シャコガイの飼育
  6-1:必要な設備
  6-2:シャコガイの選び方
  6-3:水槽へ入れる際の注意
  6-4:維持管理について
  6-5:外套膜の色を良くするためには?



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